ある晴れた五月の午後のことでした。私は庭のベンチに座って読書を楽しんでいましたが、突如として耳元でブーンという重戦車のような羽音が響き渡りました。驚いて顔を上げると、そこには親指ほどもある巨大な黒い蜂がホバリングしていました。その蜂は全身が煤を塗ったように真っ黒で、胸のあたりだけが少し黄色い毛に覆われていました。私はその威圧感に圧倒され、刺されたら命に関わるのではないかと恐怖を感じて、慌てて家の中へ逃げ込みました。窓越しにその蜂を観察していると、彼女は庭にある古い木材の隙間に興味深そうに入り込もうとしていました。私はすぐにスマートフォンを手に取り、この黒い蜂の名前を検索し始めました。最初に出てきたのは恐ろしいスズメバチの画像でしたが、どれも模様が異なりました。さらに詳しく調べていくと、ようやく「クマバチ」という名前に辿り着きました。驚いたことに、解説文には「性格は極めて温厚」と書かれていました。クマバチは木材に穴を掘って巣を作る習性があるため、古い杭や枯れ木に集まるのだそうです。また、オスは縄張り意識が強く、動くものに近づいて確認する習性があるものの、そもそも毒針を持っていないという記述を読んで、私は拍子抜けしてしまいました。先ほど私の顔を覗き込んできたのは、もしかしたら針のないオスだったのかもしれません。黒い蜂の名前を知る前と後では、庭の景色が全く違って見えました。翌日、再び同じ蜂が庭に現れたとき、私はもう逃げ出しませんでした。彼女が熱心にフジの花から蜜を集める姿をじっくりと観察すると、その羽は太陽の光を浴びて紫色の光沢を放っており、実はとても美しい生き物であることに気づきました。もし名前を調べなければ、私は彼女のことを一生「恐ろしい黒い怪獣」だと思い込んでいたことでしょう。無知ゆえの恐怖は、正しい知識によって好奇心へと変わりました。それ以来、私は庭で出会う小さな訪問者たちの名前を調べるのが習慣になりました。黒い蜂の名前を知るという小さな経験が、私と自然との距離をぐっと縮めてくれたのです。今では、あの重厚な羽音が聞こえてくると、初夏の訪れを感じて少しだけ嬉しい気持ちになるほどです。
庭に現れた巨大な黒い蜂の名前を調べた日