やけど虫による辛い皮膚炎を経験しないためには、まず敵の正体を知り、その習性を理解した上で、効果的な予防策を講じることが不可欠です。やけど虫の正式名称は「アオバアリガタハネカクシ」。体長は7ミリ程度の小さな昆虫で、頭が黒く、胸部がオレンジ色、腹部もオレンジと黒の縞模様という、アリに似た特徴的な見た目をしています。この虫は、日本全国の平地から低山地の水田や湿地、畑などに生息しており、特に梅雨時から夏にかけての高温多湿な時期に活動が活発になります。彼らが持つ毒は「ペデリン」と呼ばれ、非常に強力な皮膚炎を引き起こしますが、彼らは自ら人を刺したり咬んだりすることはありません。問題となるのは、人がこの虫を叩いたり潰したりした際に、体液が皮膚に付着してしまうケースです。つまり、彼らの存在に気づき、刺激しないことが最大の防御策となります。やけど虫には、光に向かって飛んでくる「走光性」という強い習性があります。夜間、明かりの灯った家の中に、網戸の隙間などから侵入してくることが被害の主な原因です。予防策として最も重要なのは、この侵入経路を断つことです。網戸に破れや隙間がないかを確認し、必要であれば補修テープなどで塞ぎましょう。ドアの開閉は素早く行い、虫の侵入を防ぎます。また、夜間は遮光カーテンを閉めて、室内の光が外に漏れるのを極力減らすことも有効です。もし室内でやけど虫を見つけても、決して素手で触ったり、叩き潰したりしないでください。ティッシュペーパーなどでそっと包んで捕獲し、屋外に逃がすか、殺虫剤を直接噴霧して駆除します。体に止まった場合は、慌てずに息でフッと吹き飛ばすのが最も安全です。これらの生態と習性を理解し、生活の中で少し注意を払うだけで、やけど虫による被害に遭うリスクは大幅に減らすことができるのです。
やけど虫の生態を知り被害を未然に防ぐ