アシナガバチの巣を自分で駆除するにあたり、服装や道具と同じくらい、いや、それ以上に重要なのが「決行する時間帯」です。結論から言えば、アシナガバチの駆除は、必ず「日没後2~3時間経過した、完全に暗くなった夜間」に行わなければなりません。なぜ、夜なのでしょうか。その理由は、アシナガバチの生態にあります。彼らは昼行性の昆虫であり、日中は餌を探したり巣の材料を集めたりするために、多くの働き蜂が巣の外を飛び回っています。この時間帯に巣を攻撃しても、外に出ていた蜂を駆除することはできず、戻ってきた「戻り蜂」に襲われる危険性が非常に高くなります。また、日中は彼らの活動が最も活発なため、巣に近づくだけで警戒され、即座に攻撃態勢に入られてしまいます。一方、夜になると、アシナガバチはほとんど活動しなくなり、全ての蜂が巣に戻って休息しています。視力も鈍り、気温の低下とともに動きも緩慢になります。この、敵が最も無防備になる時間帯こそが、一網打尽にするための唯一のチャンスなのです。具体的な手順としては、まず日中に巣の場所と大きさを正確に確認し、周囲の状況や避難経路を把握しておきます。そして、日が完全に沈み、辺りが静まり返った夜を待ちます。赤いセロファンを貼ったヘッドライトで静かに巣に近づき、風上から、最低でも2~3メートルの安全な距離を保ちます。そして、狙いを定め、殺虫スプレーを巣全体に惜しみなく、連続で20~30秒ほど噴射し続けます。噴射の勢いで蜂が数匹飛び出してくるかもしれませんが、慌ててはいけません。スプレーをかけ続ければ、すぐに力尽きて落ちていきます。巣の表面にいる蜂が全て動かなくなったことを確認したら、その日はそこで作業を終了します。まだ巣の内部には生き残りがいる可能性があるため、巣の撤去は翌朝以降に行うのが安全です。暗闇と静寂を味方につけること。それが、素人が行うアシナガバチ駆除の成功確率を飛躍的に高める、最大の戦術なのです。
アシナガバチ駆除、決行は日没後の暗闇で