多くの飲食店経営者が悩む害虫トラブルの根本的な原因は、実は設備の古さや場所の悪さではなく、働くスタッフの「衛生意識の欠如」にあることが少なくありません。専門の業者がどんなに完璧な駆除作業を行っても、その夜にスタッフが掃除を怠り、生ゴミを蓋もせずに放置して帰れば、翌朝には新たな害虫が招き入れられることになります。店舗を守る最強の防具は、薬剤ではなく、全スタッフの心の中に育まれる「高い衛生意識」なのです。私がコンサルティングを行ったある大型居酒屋チェーンでは、害虫のクレームが絶えず、深刻な問題となっていました。そこで私たちが取り組んだのは、駆除作業の強化ではなく、スタッフ一人ひとりのマインドセットを変えることでした。まず、スタッフ全員に「もし自分が客だったら、この厨房で作られた料理を食べたいか」という問いを投げかけました。そして、害虫の死骸や排泄物が引き起こす食中毒のリスク、SNSでの拡散による店舗倒産の恐怖を、具体的な事例を挙げて教育しました。次に、清掃を「面倒な作業」から「料理の一部」へと再定義しました。美しい盛り付けを追求するのと同じ情熱で、什器の裏側を磨くことを称賛する文化を作ったのです。具体的には、毎日の清掃箇所をスコア化し、基準をクリアしたチームを表彰する制度を導入しました。また、プロの業者による定期的な巡回時には、スタッフも同行させ、プロがどのような視点で「汚れ」や「隙間」をチェックしているのかを学ばせました。その結果、スタッフの目線は劇的に変わりました。それまで見落としていた冷蔵庫のパッキンの汚れや、排水溝の詰まりに自ら気づき、自発的に清掃を行うようになったのです。一人のアルバイトスタッフが、段ボールに付着したゴキブリの卵を見つけて即座に廃棄したという報告を受けたとき、私はこの改革の成功を確信しました。スタッフが「自分の店」という誇りを持てば、害虫という名の敵が入り込む隙は自然となくなります。害虫駆除の成功は、経営者がどれだけスタッフを信頼し、教育に時間を割けるかにかかっています。スタッフの意識改革を通じて実現した清潔な環境は、単に虫がいないだけでなく、その店に流れる空気感そのものを研ぎ澄ませ、お客様を惹きつける大きな魅力へと昇華していくのです。
スタッフの意識改革がもたらす害虫を寄せ付けない店舗経営