アシナガバチは一般的にスズメバチに比べて温厚で大人しい性格をしていると言われています。巣に近づいただけでは攻撃してくることは少なくこちらから手を出したり巣を揺らしたりしない限りは共存可能な益虫(毛虫などを食べてくれる)としての側面も持っています。しかしこの「温厚」という評価に甘えて油断するのは危険です。彼らにも絶対に譲れない防衛ラインがあり攻撃性が急激に高まる特定のタイミングや条件が存在するからです。最も危険な時期は夏から秋にかけての繁殖最盛期(7月から9月頃)です。この時期、巣には多数の幼虫や蛹がおり新しい女王蜂も生まれる準備が進んでいます。働き蜂たちは次世代を守るために神経を尖らせており普段なら見逃してくれるような距離感でも敵とみなして一斉攻撃を仕掛けてくることがあります。また気象条件も影響します。雨が続いた後や風が強い日、台風の前後などは餌が取れなかったり巣が破損したりして蜂たちのストレスが溜まっていることが多く普段より攻撃的になりがちです。さらに時間帯による変化もあります。日中は餌取りに出かけている蜂が多いですが夕方になると全ての働き蜂が巣に戻ってくるため巣の周りの人口密度(蜂密度)が高くなり防衛力も最大になります。不用意に夕方、巣の近くを通ったり洗濯物を取り込んだりするのはリスクが高い行動です。そして意外と知られていないのが「匂い」と「色」への反応です。アシナガバチは黒い色や動くものに反応するだけでなく香水、整髪料、柔軟剤などの甘い香りや強い匂いにも敏感です。これらの匂いをまとっていると蜂を刺激し誘引してしまうことがあります。ジュースの空き缶や甘いお菓子にも寄ってくるため屋外での飲食時も注意が必要です。彼らの性格は基本的には「専守防衛」ですがその防衛本能のスイッチが入った時の攻撃力と執念はスズメバチ譲りです。巣を見つけたら「大人しいから大丈夫」と放置するのではなく「今は大人しいだけかもしれない」と捉え生活動線上にある場合は駆除を検討し離れた場所にある場合は決して刺激しないよう距離を保つことが共生のルールです。彼らの地雷を踏まないための知識を持つことが不要な痛みを避ける鍵となります。