「子供の頃に蜂に刺されたことがあるけど、あれは何蜂だったっけ?」そんな曖昧な記憶を持っている人は少なくありません。しかしハチ毒に対するリスク管理においてはこの「過去の記憶」が非常に重要な意味を持ちます。もし過去にアシナガバチやスズメバチに刺された経験があるならばあなたの体内にはハチ毒に対する「IgE抗体」が形成されている可能性があります。これは次に刺された時にアナフィラキシーショックを引き起こすための準備が完了している状態、いわば時限爆弾を抱えているような状態かもしれません。この不安を解消し正確なリスクを知るために有効なのが医療機関で行える「ハチ毒抗体検査(特異的IgE抗体検査)」です。皮膚科やアレルギー科で採血を行いスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチそれぞれに対する抗体価を数値化して調べることができます。検査の結果、抗体価が高い(クラスが高い)と判定されればアナフィラキシーショックのリスクが高いと診断されます。ただし抗体価が高いからといって必ずしもショック症状が起きるわけではなく逆に低くても症状が出ることもあり絶対的な予言ではありませんが重要な目安にはなります。リスクが高いと判断された場合、医師から「エピペン」の処方を提案されることがあります。エピペンはアナフィラキシー発症時に自分で太ももに注射するアドレナリン製剤で一時的に症状を緩和し病院に到着するまでの時間を稼ぐための命綱です。特に林業や造園業、農作業など日常的に蜂と遭遇する機会が多い職業の人やアウトドア愛好家にとって自分の抗体レベルを知っておくことは必須の安全管理と言えます。また過去に刺されてから数十年経過している場合、抗体価が下がっていることもありますが油断は禁物です。検査費用は保険適用外となるケースもありますが(刺された直後の治療の一環なら適用されることも)、安心と安全を買うコストと考えれば決して高くはありません。自分の体質を知ることは漠然とした恐怖を具体的な対策へと変える第一歩です。過去の刺傷体験を軽視せず一度専門医に相談してみることを強くお勧めします。