古書が並ぶ本棚や、い草の香りが心地よい畳。趣のあるこれらの空間は、心を落ち着かせてくれますが、同時にチャタテムシやシミ(紙魚)といった湿気虫にとっても、非常に魅力的な住処となり得ます。彼らは紙や糊、畳のい草などを餌とし、湿気の多い場所を好むため、本や畳はまさに理想的な繁殖場所なのです。大切な蔵書や、くつろぎの和室を、これらの小さな侵入者から守るためには、特別な配慮と対策が必要です。まず、本棚の対策です。本をぎっしりと詰め込まず、少し隙間をあけて風通しを良くすることが基本です。壁にぴったりとつけて設置するのではなく、少し離して空気の通り道を作りましょう。そして、年に一度、天気の良い乾燥した日には、全ての本を取り出して「虫干し」を行うことをお勧めします。本をパラパラとめくって風を通し、中に虫や卵がいないかチェックします。本を空にした本棚は、固く絞った布で拭き、完全に乾燥させてから本を戻します。本棚の隅に、防虫効果のあるハーブ(ラベンダーやユーカリなど)のサシェや、無香タイプの衣類用防虫剤を置いておくのも効果的です。次に、畳の対策です。畳は湿気を吸いやすく、吐き出しにくい性質を持っています。畳の上にカーペットや家具を置きっぱなしにすると、湿気がこもり、カビや虫の温床となります。できるだけ畳の上には物を置かず、風通しを良くしましょう。掃除機は、畳の目に沿ってゆっくりとかけ、ホコリや虫の死骸をしっかりと吸い取ります。天気の良い日には窓を開けて換気し、畳に風を当てて乾燥させることが何よりの予防策です。もし湿気がひどい場合は、畳を上げて床板との間に防湿シートを敷いたり、専門業者に依頼して畳乾燥機で熱処理をしてもらったりする方法もあります。本も畳も、湿気との付き合い方がその寿命と美しさを左右します。愛情を込めた定期的なメンテナンスで、不快な湿気虫を寄せ付けず、心地よい空間を長く保ち続けましょう。
本と畳を愛する者のための湿気虫対策