どれだけ完璧に予防策を講じていても、ある日突然、本につく虫を発見してしまう不運な瞬間は訪れるかもしれません。その時、パニックに陥り、見つけた本をただ本棚から放り出すだけでは、問題を解決するどころか、かえって被害を拡大させてしまう可能性があります。冷静かつ迅速に、そして正しい手順で対処することこそが、被害を最小限に食い止めるための鍵となります。まず、虫そのものや、食害の跡、フンや抜け殻などを発見したら、被害にあった本と、そのすぐ隣にあった本を、他の本から速やかに「隔離」してください。大きなビニール袋などに入れ、虫が他の場所へ移動しないように口をしっかりと縛っておくことが、二次被害を防ぐ上で非常に重要です。次に、虫が発生していた本棚とその周辺を徹底的に清掃します。本棚の中身を全て取り出し、掃除機の細口ノズルを使って、棚の隅々、特に角や接合部分のホコリや虫、そして目に見えない卵などを念入りに吸い取ります。吸い取ったゴミは、掃除機の内部で虫が生きている可能性を考慮し、すぐにビニール袋に入れて密封してから廃棄しましょう。その後、固く絞った布(可能であれば消毒用エタノールを少量含ませるとさらに効果的)で本棚の内外を拭き上げ、完全に乾燥させます。そして、隔離しておいた本の処置に移ります。一冊ずつページを丁寧にめくり、中に潜んでいる虫や卵がいないかを確認し、見つけ次第ティッシュなどで潰さずに取り除きます。有効なのが、伝統的な「虫干し」です。天気の良い乾燥した日に、直射日光が当たらない風通しの良い場所で、本を扇状に開いて立て、数時間から半日ほど風に当てます。これにより、本の湿気を飛ばし、虫が棲みにくい環境にすることができます。家庭用の布団乾燥機を使い、低温でゆっくりと本を挟んで乾燥させるという方法も有効ですが、熱による紙の劣化には十分注意が必要です。もし被害が広範囲に及んでいる場合は、部屋全体を対象としたくん煙タイプの殺虫剤の使用も選択肢となりますが、本への影響を考慮し、最終手段と考えるべきでしょう。早期発見と適切な初期対応が、あなたの大切な蔵書を救うのです。