蜂の巣を見分ける際、形状と同じくらい重要な指標となるのが、その「素材」と「色」です。蜂は種類によって使用する建築資材が異なり、それが巣の耐久性や外観に直結しているからです。まず、私たちが住宅街で見かける多くの巣は、灰色や茶色、あるいはそれらが混ざり合った複雑な模様をしています。これらは主にスズメバチやアシナガバチの巣で、素材は樹皮や枯れ木の繊維です。彼らは強力な顎で木を削り取り、自身の唾液と混ぜ合わせることで、パルプ状の「紙」を作り出します。スズメバチの巣に見られる美しい縞模様は、異なる種類の木から集められた資材が層を成している証拠です。この模様が濃く、はっきりしているほど、多くの働き蜂が広範囲から資材を集めている活発な巣であると言えます。対して、全体が均一な灰色で、和紙のように薄く見えるのはアシナガバチの巣に多い特徴です。一方、全く異なる素材で作られるのがミツバチの巣です。ミツバチは植物の繊維ではなく、自分たちの体から分泌される「蜜蝋」を資材として使います。そのため、作りたてのミツバチの巣は清潔感のある白や薄いクリーム色をしており、触ると少しベタつきがあるのが特徴です。時間が経過し、ハチが何度も出入りしたり、蜂蜜が貯蔵されたりすると、巣の色は次第に黄色から濃い茶色へと変化していきます。また、泥を主成分とするドロバチの巣は、乾いた土の色そのもので、触るとザラザラとした質感があります。これらの素材の違いは、そのまま蜂の「武器」の違いをも示唆しています。紙の巣を作る蜂たちは、高い攻撃性と鋭い毒針を持つものが多く、巣を守るための警戒心が非常に強いです。一方で、蜜蝋の巣を作るミツバチは、巣自体が食料貯蔵庫としての役割を兼ねているため、個体としては比較的穏やかですが、巣の近くでは異常なまでの執着を見せます。泥の巣を作る蜂は、単独行動を好むため、集団襲撃のリスクはほとんどありません。巣の表面を覆う色や質感を観察することは、その中に住まう蜂たちがどのような刃を隠し持っているかを知るための、静かながらも確実な情報源となるのです。
蜂の巣の素材と色が教える蜂の正体と危険度