コンクリート打ちっぱなしの住宅が、なぜ冬場でもゴキブリにとって魅力的な場所になるのか、その理由はコンクリートという素材が持つ「蓄熱性」という物理的な特性に隠されています。木造住宅に比べて、コンクリートは非常に高い熱容量を持っており、一度太陽光や暖房で温められると、その熱を長時間にわたって内部に保持し続ける性質があります。冬の夜、屋外の気温が氷点下に近づいても、厚いコンクリートの壁は蓄えた熱をじわじわと室内に放出し、建物全体を巨大な湯たんぽのような状態に保ちます。この一定の温度こそが、寒さに弱いはずのゴキブリが越冬するための最高の条件となります。多くの人が「冬になれば虫はいなくなる」と安心しますが、コンクリート住宅の内部、特に冷蔵庫の裏側や配電盤の周辺、さらには温まったコンクリート壁のわずかな隙間の中では、彼らは死ぬことなく活動を維持し、春の繁殖期に向けて静かに力を蓄えています。これが、冬場でもコンクリートマンションで不意にゴキブリに遭遇する最大の理由です。また、コンクリート壁は一度冷え切ると逆に温まりにくいという性質もあるため、外気との温度差による「結露」が発生しやすくなります。結露によって生じた水分は、乾燥を嫌うゴキブリにとって貴重な水分補給源となり、さらに結露した壁面に発生するカビは彼らの餌にもなります。つまり、蓄熱性と結露というコンクリート特有の二面性が、害虫の生存戦略と完璧に合致してしまっているのです。対策としては、冬場であっても油断せず、家具を壁から数センチメートル離して配置し、コンクリート壁の表面温度を一定に保つとともに、サーキュレーターなどで空気を循環させて結露を徹底的に防ぐことが重要です。コンクリートの温もりは人間にとっても心地よいものですが、それが同時に招かれざる客を越冬させてしまうリスクを孕んでいることを理解し、一年を通じて隙間の封鎖と湿度管理を怠らないことが、都会の要塞を守り抜くための科学的な防衛術となります。
コンクリートの蓄熱性とゴキブリの越冬戦略