家の中に侵入してくる蟻を退治しようとする時、多くの人は「蟻」という一つのカテゴリーで捉えがちですが、実は私たちの家屋に侵入してくる蟻にはいくつかの種類があり、それぞれ生態や好む餌が異なります。敵の正体を知ることは、より効果的な戦略を立てる上で非常に有利に働きます。日本家屋でよく見られる代表的な蟻とその対策について知っておきましょう。まず、キッチンなどで頻繁に見かけるのが、体長二ミリ程度の非常に小さな茶色い蟻、「イエヒメアリ」です。彼らは非常に繁殖力が高く、一つの巣に複数の女王蟻が存在し、巣が分かれて増える「分巣」という厄介な習性を持っています。そのため、殺虫スプレーなどで下手に刺激すると、かえって巣が分散して被害が拡大する恐れがあります。イエヒメアリに対しては、巣ごと根絶やしにできるベイト剤(毒餌)の使用が最も効果的な対策と言えるでしょう。次に、黒くて三ミリから五ミリ程度の大きさで、窓際や畳の上などを徘徊していることが多いのが「クロヤマアリ」やその仲間です。彼らは主に屋外に巣を作り、餌を探すために家の中に侵入してくるケースがほとんどです。甘いものを好む傾向があり、食べ物の管理を徹底し、侵入経路となる窓のサッシの隙間などを塞ぐことが最も重要な対策となります。また、夏場に大群で現れ、時に人を噛むこともあるのが「アルゼンチンアリ」です。この蟻は特定外来生物に指定されており、非常に攻撃的で繁殖力も強いため、もし見つけた場合は、ベイト剤で駆除するとともに、地域の自治体に報告・相談することも重要です。このように、蟻の種類によって効果的なアプローチは微妙に異なります。もし設置したベイト剤に蟻が全く興味を示さない場合は、好む餌が違うのかもしれません。糖分を好む蟻用のベイト剤と、タンパク質を好む蟻用のベイト剤の両方を試してみるのも一つの手です。もちろん、種類が特定できなくても、基本となる「ベイト剤による巣の駆除」と「侵入経路の封鎖」という二大戦略は、ほとんどの種類の蟻に対して有効です。敵をよく観察し、適切な武器を選ぶことで、蟻退治の成功率は格段に向上するはずです。
その蟻に合った正しい退治方法