家の中でねずみのふんを一個でも発見したならば、それはもはや「様子を見る」という段階ではありません。すでに敵の侵入を許してしまった以上、次に取るべき行動は、潜んでいる敵を確実に仕留める「駆除」です。しかし、相手は三億年以上も地球上で生き延びてきた、非常に賢く、警戒心の強い生物です。やみくもに対策を講じても、簡単には罠にかかってくれません。プロの視点に基づいた、効果的な駆除グッズの選び方と、その設置のコツを知ることが、勝利への近道となります。市販されているねずみ駆除グッズは、大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、最も古典的で強力な「粘着シート」です。これは、強力な粘着剤が塗られたシートの上をねずみが通ることで、身動きを取れなくして捕獲するものです。効果は非常に高いですが、生きているねずみを直接目にすることになり、後処理も精神的な負担が大きいというデメリットがあります。二つ目は、「殺鼠剤(さっそざい)」、いわゆる毒餌です。これを食べたねずみが巣に戻ってから死ぬため、他のねずみに警戒心を与えにくく、巣ごと駆除できる可能性があります。最近では、食べたねずみが明るい場所で死ぬように設計されたものや、スーパーラットと呼ばれる薬剤に耐性のあるねずみにも効くタイプも市販されています。ただし、小さな子供やペットがいる家庭では、誤食の危険性に最大限の注意を払う必要があります。三つ目は、「超音波装置」です。ねずみが嫌う周波数の音波を発生させて、家に寄せ付けなくするというもので、死骸を見ることなく、人道的に追い払えるのが最大のメリットです。しかし、効果には個体差があり、慣れてしまうと効果が薄れるという報告もあります。これらのグッズの効果を最大限に引き出すための共通のコツは、ねずみの習性を理解することです。彼らは極度の警戒心から、見慣れないものが置いてあると、数日間は近づこうとしません(忌避行動)。そのため、罠を仕掛けたら、すぐに効果が出なくても、最低でも一週間は場所を変えずに辛抱強く待ち続けることが重要です。また、罠を設置する際は、人間の匂いをつけないように必ず手袋を着用し、ねずみの通り道である壁際や、ふんがあった場所の近くに置くのが鉄則です。一個のふんから始まる繁殖の連鎖を断ち切るために、敵の心理を読み、戦略的に罠を仕掛ける冷静さが求められるのです。
一個のふんから始まる連鎖を断て!プロが教えるねずみ駆除の罠